ReadMasterの軌跡

面白いことを仕掛ける。仕事を作る。ビジネスを作る。そんな日々から出てくるアウトプット蓄積場。

言心者をめぐる戦い

エピソード5

輝かしい功績をもった勇者は
退却を厭わず判断する。
疲れきった侍は
自身の身を案じ、農民の格好をしこの場を去る。

見えないバリア、言葉の壁、
見えない声、聞こえる言葉。

安堵の中から、
月がきれいに雲に覆われ、
モザイクのようにはっきりみえない。

かろうじて、現在位置を
教えてくれるのは、
僕はここにいるという感覚だけだ。

言心者にとって、
姿を現すこと、言葉を発すること、
対話をすること、口を動かすこと、
動くこと、文章を書くこと・・・。
全てが同一の動作であり、行為であるという。

階層を重ねていったケーキは、
断面が重ねた感じで見えるが、
言葉もそのように重層的なものがある。
それが、言心者の発する言葉であり、
心が震える言葉なのだ。

僕には、私にはそのような言葉は持っていない。
ただ、言心者の前にひれ伏すのみなのだ。

エピソード4

そこに言葉はなかった。

「君はそこにいるのか」
「・・・」
「会話というのは、相手が話してそれに応じて」
「・・・」
「君にしゃべる気がないなら、もう話はしない」
「・・・」
「要するに気味は何がしたいんだ?」
「・・・」

言心者との会話は不可能だった。
私が何を言っても何を言おうとしても、
まるで筆談をしているかのように、
そして初めて接客のバイトをするような
もどかしさがあるのだが、
全く成長と進展がそこにはない。
ただ、会話ができない。ただ、それだけだ。

「もしかして話すことができないのか?」
「・・・」
「ならば書いてみればいい」
「・・・」

黒い鉛筆。
それで白紙をなぞる。
文字が出ない。

そう白紙は白紙のままなのだ。
私の目にはそうみえる。
言心者にはどうみえるのか?

「何も見えないが、君は文字を書いたのか?」
「・・・」

見えないようだ。
よって、私が知覚する現象は、
相手にとっても、ここでは言心者だけだが、
同じといえる。
要するに私は文字を知っているが文字を書けない。
言葉を知っているのに言葉を書いて表現できない。
私は何も伝えられないのか。

ジェスチャー。
そう私はひらめいた。
私は<なんでこうなっているのか分からない>という
ジェスチャーをしたが、
言心者は言葉をのみしか解釈しない。

書いても見えない。
言っても声が言葉に、言葉が声にならない。

どうすればいい。
私は考えている。
言心者とは一体なんなのだ。

世界は、私と言心者しかいないのか。
世界とは何か。
一体この世界は何なのだ。
何がこの世界を規定するのか。
言心者にとっては、言葉であるが、
私にとっては言葉なのか。そうではなく、
違うものなのか。分からない。

ただ、ある日起きたら夢の世界かどうか分からず、
言心者の世界っていうような世界にいるだけだ。

悪い夢なら覚めて欲しいが、
夢を見ている感覚がない。

一体ここはどこだろう。
誰も助けてくれる気配はない。

言心者と会話をすることはできない・・・。


エピソード3

言葉言葉言葉言葉。
言葉を何度も書いていると、
それが言葉ではなく、ある種の記号に見えてくる。
漢字の練習。書道での筆のはこび。
言葉は記号で、記号で埋め尽くされた世界がここにある。

それが言心者がいる世界だ。
この世界では、言心者によって規定された
言葉の世界のルールで、秩序が保たれているらしい。

強気であることと、気が強いことは全く同じ記号ではない。
強気も気が強いも同じ意味じゃないかと思うと、
この世界ではやっていけないらしい。やれやれ。

言葉を信じ切れるかどうかが
言心者になれるかどうかの最後の試練らしいが、
そもそも一体私はどこにいるのかちょっと分からない。
言葉の世界とはいえ、どうみても、現実の世界、
いや昨日まで住んでいた部屋はそのままだし、
自分の顔、形などすべて変わらない。寝癖も変わらない。
腹が減ることも変わらない。

変わったのは、言葉に対する意識だけだ。
夢だと思うが、言心者と名乗る人物が近づいてきて、
自分の問いは全て言葉にしたが、かき消された。
そんな夢だったと思う。
その夢だったものから、さめた後、今に至る。

思い切って、挨拶を意味する言葉を発してみる。
誰もいないけれど。
「おはようございます」
無事に声が出たような気がする。しかし何か怪しい。
本当にこれは自分の声だったか。言葉だったか。
記号が記号によって構成され、記号を聞いているようですらある。
もしかして、絶対音感ならぬ絶対言感みたいなものかもしれない。
しかし、これはあまり気分が良くない。
とりあえず、仕事に行くとしよう。

外へ出ると、違和感を感じた。
街の看板、あらゆる文字が、消えている箇所がある。
それはとても人工的に、まるでパソコン画面で
白く塗ったように、消えている。
ためしに、クリーニング屋の看板を触ってみる。
手には何もつかない。ただ、文字がない。

もしかして、自分だけこうなっている?
とにかく、出社して、同僚に確認してみよう。
このままでは不安すぎる。

なんといっても、現在、見えそうで見えない文字が
一杯あるのだから。

エピソード2

近くにいた。
それも自分より近い距離にいた。
心の中にバリアをはっても、
言心者にとっては効果はない。

ベッドから起きる起きないを繰り返していたら、
あっという間に言葉の世界へ。
ここは夢か夢か。
言葉の世界は夢か。夢は言葉の世界か。

確実であるという一歩を踏み込む。
左足が上がり、やや前を踏み込む瞬間・・・。
言心者が現れた。

言心者にとっては
全てが言葉だ。

私は大きな声で、相手を確認するような言葉を吐いた。
しかし、それは効力がなかったかのように、
または聞こえなかったかのように。
言心者と相手は名乗った。
言心者とは何かと聞く言葉を私は吐いた。
しかし、それは認められなかった。

この世界では、言葉が相手より強力であることを
担保にして、世界が成り立つ。
私の世界では、言葉に対してそのようなものがなかった。
言葉が強いとは何なのだ。

言心者が近づいてくる。
無効。

存在が無効。

言心者は言ってないが、そう言っているように近づいてくる。

もう一度言葉を私は吐く。
私はここにいて、お前は何者だというような言葉を言葉にする。

言心者はニッコリ微笑み、
こういった。

ようこそ、言葉の世界へ。

エピソード1

■エピソード1■

言心者にとって
言葉の世界は、その存在であり、
またその生命の源であり、
また生命自体である。

言葉によって
規定されるものと、規定されないものがあり、
規定されるものに絶大な関心を寄せる。
言葉は記号だが、言心者自体が記号的存在といっていいかもしれない。

言心者。
それは、言葉を信じる心を持つものを指す。

言葉で規定できないものは、
この世に存在しないものとみなす。
いかなる現象、戦争、殺戮、事故、自然現象など
言心者にとっては、言葉にできなければ、
目の前のことはなかったものとみなされる。

深い目の奥には、
大きな大きな猜疑心を抱く。

猜疑心をもって、自身の言葉をすら疑う。
だからこそ、言心者にとって、
言葉とは、生命以上のものといっていいかもしれない。

言葉で定義されたフレームワークのような世界。
世界が言葉だといっていい。
そこでは、規定された言葉でしか、何もあらわせない。

ジェスチャー、音楽、スポーツは
すべて空白として扱われる。

世界に対して何かいう場合は、
言心者になるか、もしくは、言心者を雇い、
自己表現、自己主張、言葉をつづる必要がある。

言心者を雇わなくても、
言葉を書けばいい。
しかし、言葉自体が強力ではない限り、
簡単に粉々になり、主張することができない。
どんなに心を込めたとしても、
言葉に対する愛情がない限り、それは空白だとみなされる。

言葉によって言葉を規定する。
ならば、言心者もしくはこの言葉の世界は
そもそも何によって規定されたといえるのか。

言葉は言葉を生み出す。
最初の言葉は1語だったかもしれない。2語だったかもしれない。

例えば「愛」という言葉があるとき、
愛は生き残った言葉である。
また、現在も使うことができる言葉である。
その「愛」は、今も使用者によって守られているといってよい。

また「生きる」という言葉がある。
「生きる」も現在使うことができる。
正確にいえば、言心者にとって認められていない言葉は、
誰にも使うことができない。
絶対的な存在、神といったほうがいいだろう。
言心者を志すものは、多い。
しかし、言心者になれるものは世界に一人だ。

言葉の世界にたった一人の王者のように、
君臨する。それが言心者だ。

言心者を目指す人々が、
言葉を操り、言葉の海でもがいている。
海を越えれば、また海が待っている。
それにも関わらず、言心者を目指す者は
絶えることはない。

言心者をめぐる戦いが始まる。

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