輝かしい功績をもった勇者は
退却を厭わず判断する。
疲れきった侍は
自身の身を案じ、農民の格好をしこの場を去る。

見えないバリア、言葉の壁、
見えない声、聞こえる言葉。

安堵の中から、
月がきれいに雲に覆われ、
モザイクのようにはっきりみえない。

かろうじて、現在位置を
教えてくれるのは、
僕はここにいるという感覚だけだ。

言心者にとって、
姿を現すこと、言葉を発すること、
対話をすること、口を動かすこと、
動くこと、文章を書くこと・・・。
全てが同一の動作であり、行為であるという。

階層を重ねていったケーキは、
断面が重ねた感じで見えるが、
言葉もそのように重層的なものがある。
それが、言心者の発する言葉であり、
心が震える言葉なのだ。

僕には、私にはそのような言葉は持っていない。
ただ、言心者の前にひれ伏すのみなのだ。