むー。
結構面白いかなーと思ったものの、すっきり感がない。

確かに主人公の、誠が作った会社は現代の起業家となぞらえることが
できるやもしれない。そもそも光クラブ事件という本当の出来事から
書いているようだけれど。

お金が目的ではない、起業である時点で、屈折というか、多分僕には分からない
その時代特有の、つまりは、戦後の何もない時代にある種の思想がある?
そういうものか。まあ、とにかく分からん。

解説を読んでやや納得するが、結局この作品は読んでみた結果あまり面白くない。
アフォリズムとよばれる、格言めいた言葉は結構でてくるが、ややハズレている気がする。

解説にもあるように、幼少時代として、中学時代くらいまでを綿密に書いてるが、
そこから、大学生くらいまで一気に飛んで、なぜか会社を興すことになる。
それは詐欺で金を失ったリベンジでもあるのが、どうもここらへんも曖昧である。

まとめていってしまえば、主人公のやや特有の心理を抽象的に描こうとしている、
が、それはあまり面白くなく、むしろ人工的すぎて、人間味がない感じを受けた。
つまり、誠のような人間がいてもいなくても小説だからいいのだけど、
いそうな気がしないということを僕は感じた。のが、ややまずい。

さらに言えば、そういう人工的な主人公は、結局、毒をもって自殺するわけでもなく、
暗示する程度で物語は終わっている。

主人公は、何がしたいのかを追求すると、おそらく、誠は誠で自分なりの哲学があり、
それで人生を謳歌?したかったのかもしれない。
ただ哲学は別にいいが、抽象的とか客観的なものと、感情とはやはり一緒にできないのか、
そこらへんの描画が怪しい。心理的描写がいいというアマゾンレビューもあるが、
とくにこれといった印象深いものは残っていない。

感情がないというのは、客観的描写の成功なのかといえば、
それは何か違う気がする。客観的描写とは、自分ではない何かがそこにいるように
描くことだが、自分ではないものに対して「感情」はあまり入れれないのが自然だ。

その時点でこの試みは破綻しているのだが、どうなんだろう。

ペルソナという仮面をつけて生きることはできるし、それは自然だが、
ペルソナをつけているのに、つけている自分を演じるのはややナンセンスな気がする。

表現が下手だな。うーんと、自分はお金持ちだからといって、お金持ちを演じる人は
あまりいないでしょう。もっとも演じるにも色々ありますけど。
あえて見せる必要はないというか。ああ、でも見せたがる人もいますな。
貧乏人は、貧乏に生きたいというよりも、結果でしょう。多分ね。

っていう流れで再トライ。
客観的であるのと、感情はやっぱぶつかりあって、きついわ。
だから、この小説から読み取れる主人公の心理は膨大にあれど、
それは客観的すぎて、感情移入はもちろん、誠を人間として捉えづらいところがあると。
うむ、まとまった。

で、こもれび氏のおすすめだったけど、微妙でした。許せ(笑)
こういうもともあるさ。ライブドアを考える材料とはならんかもね。
ただ、ホリエモン自体が、そういう傾向のある人、つまりは、自分を客観視して、
コントロールして、その上でお金でドンといくなら、結構共通なところがあるかもね。
まあ、そんなところでござい。


青の時代青の時代
三島 由紀夫

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